コウベガタリ - 神戸語り -

『~「株式会社」のしくみ~』

2010年1月 3日

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(なつかしの神戸 より)

 

今年最初の語りは何にしようかと考えたが、やたらお正月のテレビ番組を見ていたら、政治や経済の話が多かったように思うので、今回は「株式会社」の仕組みを簡単に語ってみようと思う。

 

世界で始めての株式会社は十七世紀初頭の「東インド会社」と言われている。 今と違って飛行機や汽車がない時代で、遠い国と貿易をするには船が一番であった。当時、世界で力を誇っていたのはポルトガルやオランダであった。彼らは海に面した国で海洋の覇権を握り、アジアにおける植民地と香辛料の貿易を通じて繁栄していた。 しかし、当時の航海は危険を伴うもので、出発したものの嵐や海賊に遭い、無事に戻って来ること自体大変な時代であった。

 

そんな航海には大変な費用がかかった。 まず遠洋が出来る船を造り、次に乗組員を集めなくてはならない。王族や大貴族でない限り、まとまったお金を出す事が出来なかったのは当然である。 そこで、大勢の人々からお金を集める事を思いついた。一人が多額の資金を出すのではなく、多くの人が自分の出せる金額を出資するのである。もし、無事に航海から戻ってくれば、香辛料などの品々を手に入れる事ができ、さらに出資した金額以上の利益を得られる事が、多くの人がお金を出してくれる理由であった。

 

冷蔵庫のない時代、ヨーロッパでは、肉を塩づけで保存しなくてはならなかったので、かなり臭かったと言われている。そこで、東南アジアから運ばれたコショウをはじめとする香辛料がかなり人気でとても高価な物であった。 コショウ1gと金1gが同じ価値であったとも言われていた。 調達先の東南アジアでは、そんなに高価ではなかったはずであるから、無事に寄港すれば、儲けは莫大であったに違いない。 このように一人では無理な事でも、多くの人が出資してくれる事によって多額の資金が集まり、会社を興す事ができる方法が、株式会社の特徴の一つの「資金調達」の考えである。

 

会社の資金を出した人たちを資本家、株券を持っている人を株主と言う。どちらにしても会社の所有者である事には違いがない。では、この会社の所有者が直接経営しなくてはいけないのかと言うと、先ほどの例で言えば、航海をする会社に出資した人は自分で船に乗って航海しなくてはいけない事と同じである。当たり前であるが、お金を出す人と実際に航海する人は違う。お金を出した人が直接航海しなければいけないのなら、よほどの冒険好きな人でない限り出資しないはずである。 

 

つまり、集めたお金の中から、船長をはじめプロの乗組員を雇えばよいのである。現代に当てはめると、経営手腕に長けた人、経営のプロに社長として経営を行ってもらえればよいのである。 これが、資本と経営が分かれいる株式会社のもう一つの特徴である「資本と経営の分離」の事である。

 

私がよく子供の頃に、「将来、何に成りたいの?」て聞かれたら、「社長さんに成りたい!」て答えたものだ。でも、誰でも一度は、「社長さんはお金持ちで一番偉い!」と思ったのではないか。社長さんのイメージは、「大きな家に住んで、高級車に乗って・・・・・。」と思ったはずである。 それが、会社の仕組みや経済の仕組みが何気にわかってくると、「社長には成りたくない!」と思ってしまう。だって、経営能力や責任能力を問われて、常に気が休まらないはずである。 レストランでも、「オーナ」と「シェフ」が分かれている店もあれば、ここは、「オーナーシェフ」が料理を作ってくれると言う店もある。 もちろん、その人の能力で規模が違ってくるのであろうが。私はいつも、店に掛かって来る電話で「オーナーさん、ですか?」て聞かれたら、「いいえ違います。」と答えてしまう。 だって、「オーナー」て責任がかなり重いような気がするので、「マスター」と呼ばれると、「はい!」と間髪入れずに返事してしまう。 これも、一種の職業病であるのだが。 言い忘れたが、株式会社には、「有限責任」てのがあるのも特徴の一つである。

 

(注・・・会社の形態で、「有限責任」と「無限責任」に責任の範囲が違うので出資する時は、よく調べる事!)

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